A法律事務所が業務停止処分を受けた件
10月11日、テレビCMなどで有名なA法律事務所(及び元代表者)が、東京弁護士会から2か月(及び3か月)の業務停止処分をうけました。
A法律事務所についての評判や意見等は様々な報道媒体等にひとまずお任せするとして、一番大きな影響を受けたのは間違いなく同事務所の依頼者の方々だとおもいます。
そして、「依頼者目線の記事が少ない」というご意見を多々目にしました。
これは、A法律事務所が処分の妥当性を争う姿勢のためおそらく東京弁護士会側に依頼者個人情報を開示していないこと(=東京弁護士会側も依頼者個人情報を把握していないこと)と合わせて、東京弁護士会をはじめとする各弁護士会も処分に当たっての事前準備が整えられなかったこと(=手続の性格上全国単位で事前準備すること自体も難しいとは思うのですが)、が大きな要因だと思います。
そこで、一弁護士の立場から、依頼者の方々に少しでも参考になればと思い、投稿します。
1.所属弁護士への継続委任を希望される方々
これまでの経緯から、引き続き事件処理をお願いしたいと思えるだけの信頼関係のある所属弁護士(事務局ではありません)がいらっしゃる方の場合は、その所属弁護士に連絡を付けて継続委任をお願いするのが一番早いでしょう。
ただ、特に債務整理事案では事務局しか対応していないことも多い事務所だったようですので、あまりこういう方々はいないのかもしれないと想像します。
仮にそういう所属弁護士がいる方の場合でも、すぐに連絡を取ることは難しいかもしれません。そういう事態を予め想定して事務局体制が整えられていたかどうかによります。
待っていれば、そのうち所属弁護士から何らか連絡があるかもしれませんが、全くないかもしれません。
2か月後に果たして現実的に従前と同様の体制を維持したまま業務を再開できるのか(=弁護士も事務局も大量に逃げてしまうのでは?)という問題もありそうです。
また、弁護士法人に業務停止処分が下された事例ですので、その所属弁護士(社員)と改めて委任契約を結ぶにしても、諸法規に照らした適法な契約を締結する必要があります。十分ご注意下さい。
2.新しい弁護士を探されたい方
これが一番お困りの部分だと思います。
しかし、ここについては、誠に恐縮なのですが、皆様自身で知人のつてや弁護士会法律相談などを通じて、自発的に新しい弁護士を探していただくのが、現実的には一番手っ取り早いと思います。
ただ待って頂いても、日弁連や弁護士会からご自宅にご連絡が行くことはまずないだろうと思います。
結局、各弁護士会も対応できるだけの体制が整っていない、というより「整えられない」のです。
理由はいくつかありますが、一番大きな理由は、A法律事務所が処分を不服として争う姿勢を見せていることだと思います。
A法律事務所が甘んじて2か月の業務停止処分を受け入れ、その間の代替サポートを東京弁護士会をはじめとする各弁護士会に依頼してくれるなら、各弁護士会も対応が可能なのです。
しかし、まだA法律事務所の業務停止処分が確定していないということになると、上級審(日弁連)で東京弁護士会の判断が覆る可能性がないとは言えません。
そういう状況で、弁護士会が率先してA法律事務所の仕事を奪うようなことはできない、となるわけです。
同様の理由で、各弁護士からA法律事務所の依頼者の方々に対して積極的かつ大々的に手を差し伸べることも難しいのです。
ハイエナのような真似をしたくないというのもあるでしょうし、万一あとで日弁連の審査で処分がより軽いものに変更されたらややこしい、ということもありますし。
また、弁護士には、他の弁護士が受任中の事件に後から首を突っ込んで重ねて受任することは許されない(=後から委任を頂く場合は、依頼者の方自ら前の委任契約を解除して頂いてからでないとならない)、という内々の定めもあるのです。
個人的には、日弁連の審査結果が出るまでに優に2か月なんて過ぎてしまうはずですから、A法律事務所もここは自分の主張を強弁するのではなく、依頼者の方々の保護を最優先して、処分を受け入れておいた方が、いろいろな意味で後々のダメージが少ないと思うのですが。
たぶんそういう意思決定を行いうる状況にもないのかな、と思います。
昨年2月に消費者庁から景表法違反の措置命令を受け、さらに今年4月に東京弁護士会綱紀委員会から審査回付決定を受けて以降、逃げ出す弁護士はさっさと逃げ出してしまっているようですしね。
A法律事務所の元所属弁護士ばっかりの経歴ロンダリング事務所もあるようです。
そういうわけで、A法律事務所の依頼者の皆様は本当に厳しい状況だと思いますし、弁護士としてそれは本当に申し訳ありませんとしか言いようがありません。
ただ、お困りの皆様をお助けしたいという気持ちは、通常の弁護士なら皆同じだと思います。
お困りの方は、地域の弁護士会や、地域の弁護士にぜひご相談下さい。
もちろん私も、とりあえず10月16日月曜日から20日金曜日までの間、A法律事務所の依頼者の方々から10時~17時にご連絡(045-222-2765)を頂ければ、試験的に無料電話相談(=現状に対するアドバイスないしセカンドオピニオン)で対応させていただく用意があります。
通常当事務所は無料電話相談はいたしませんが、今は緊急事態です。
ただ、裁判の関係等で留守にしていることも多いので、そのときはご容赦ください。
メール相談も受け付けております(ホームページ内にメールフォームがあります)。
個人の弁護士事務所ですので、マンパワーに限界はありますが、多少なりとも依頼者の方々のお役に立てればと思います。