最近判決事例が増えている件

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ここ数年、訴訟が和解ではなく判決で終わることが増えたな、と感じます。

 

私個人としては、まず訴訟前に話し合いで解決できるのが一番望ましい形で、仮に提訴しても、判決言い渡しまで行くよりも、早めに和解で終わる方が良い、と思っています。

やはり訴訟は、当事者双方にとって負担だと思いますから、速やかに紛争解決できるメリットって絶対にあると思うんですよね。

それに、訴訟の請求の趣旨というのは非常に形が限られていて硬直的なので、判決での解決というのは非常に紋切り型になりがちです。

判決より和解の方が、様々な周辺事情を盛り込んで柔軟な形での解決が可能となります。

訴訟中のどの段階でも和解は可能ですから、解決に至るスピードも和解の方が早いです。

 

でも、どうしても話し合いでの解決ができず、判決に至ることはままあります。

そういうことがここ数年増えた気がするな、と思うのです。

もちろん判決に至る時は十分な結果を出していますので、依頼者の方にも満足していただいていますし、私もそれで良いのですが、「それにしても判決で終わる事例が増えたな」という思いが強いのです。

 

で、そういう時は大体

「この件は和解で終わっておいた方が対立当事者もメリットがあったのにな、かわいそうに」

と思うことが多いのです。

 

判決事例が増えている理由を自己分析すると、まず考えられるのは、おそらく私自身が、提訴前に話し合いで解決できそうな事例を見抜いて、提訴前に話し合いで解決してしまうことが増えたのだろうな、と思います。

つまり、何でもかんでも提訴しているわけではなく、吟味して、早期の話し合い解決が困難な事例のみを提訴する、という形が出来上がってきた、ということがあるのだろうなと思います。

実際、この11月から12月にかけて受任し、既に話し合いで解決した事例も、数えてみたら結構ありましたので。

 

で、そうやって選び抜かれた(?)事例についてやむなく提訴するわけですが、その訴訟がなぜなかなか早期の話し合いで解決できなくなってきたのか、というところが問題です。

もちろん判決をいただくしかない事例も多々ありますが、中には和解解決の可能性を織り込みつつ提訴する事例も多くあるわけで、そういう事例(=つまりこちらも和解解決を希望しており、おそらくは対立当事者本人も和解解決を希望していないわけではない事例)についてまでもなかなか和解が成立しないのはなぜなのか?ということです。

 

私の独断と偏見で申し上げるならば、その理由は、

「対立当事者側に付く代理人弁護士の力が全体的に落ちたから」

だと思います。

すみません。

 

この場合の「力」とは、訴訟の先を見通すいわば目利き力、訴訟の結果事態がどう進展するかを予測する予測力、紛争全体を俯瞰してベターな落としどころを模索できるバランス感覚、対立当事者側の弁護士(=私)や裁判官の腹のうちを見抜くいわば対人力、といったものが挙げられますが、大きく一括りにすれば「人間力」と言ってもいいかなと思います。

 

いわゆる「不謹慎狩り」なるものが横行する昨今、弁護士に限らず、日本人全体のスケール感が縮小傾向にあることは、残念ながら否めないように思います。

で、そうなってくると、おそらくちょっと頭の回る弁護士は、いわゆる負けスジ事案の受任を、最初から回避するようになるのでしょうね。

受任しても負けるのですから、弁護士費用も請求しづらいですし、訴訟進行に当たっても依頼者との関係で確実にストレスを抱えそうですものね。

依頼者(=こちらからみれば対立当事者)側も、負けますよと言ってくれる正直で親切な弁護士には依頼する気になれず、結局「勝てますよ」とか適当なことを言ってしまう弁護士の方になびきがちなのでしょうね。

だから、私の提訴した事案(=つまり、対立当事者側からみれば負けスジ事案)では、そういう感じになってきてしまっているのかな、と思います。

 

手前味噌ですが、訴訟や調停で私が解決に向けた提案をする時は、双方当事者にとってそこまで悪い内容で提案することはあまりないと思います。

対立当事者側の代理人でこのブログを見てくださっている方がいらしたら、まずは私の提案内容を検討して、判決になった場合の予測(=希望的観測ではなく、現実的な予測)と比較してみて下さい。

で、依頼者(=こちらからみれば対立当事者)とよく話し、早期の話し合い解決に向けて説得してください。

対案を出すにしても、無茶な対案ではなく、解決に向けた冷静な対案をお願いします。

早めに紛争を解決するということは、双方にとってメリットのはずです。

 

なぜこんなことをここで申し上げるのかというと、変な話ですが、このところ、あまりにも対立当事者が可哀想に思えてならない結末の判決事例が多すぎるからです。

もっと違う代理人弁護士をつけてくれてさえいれば、あなたはここまで負けずに済んだのに、と。

私がやっつけておいて申し上げるのも何ですが、でも我々は傭兵ですから、依頼者のミッションを完全に遂行するしかないのです。

でも、ぶっちゃけた話、当方依頼者も最初はここまであなたをやっつけようとは思っていなかった、途中で早期の話し合い解決をしてくれていればここまでには至っていなかった、ここまでの事態に至ってしまったのは結局あなたの側で話し合い解決を断ってしまったからだ、ということがあるわけです。

 

改めて、対立当事者側の代理人弁護士の皆様には、出来るだけ早期に紛争を解決する方向でお互い動きましょうね、とお願いしたいです。

私、見た目は怖いかもしれませんが、話してみると結構いい人だと思いますよ。

ではまた!