本日の判決と新証拠に思うこと

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本日は、リンゼイ・アン・ホーカーさん殺人事件の裁判員裁判(一審)において、被告人に無期懲役判決が言い渡されました。
争点となっていた殺意は、当然のごとく認定されましたね。
もう一つの致死の方は、もともと難しそうだなという印象で、結局認定されませんでしたが、量刑に対する影響はなかったと思います。
リンゼイさんのお父さんのビルさんは、公判終了後、報道陣の取材に応じ、「4年半、リンゼイのために正義が下される日を待っていた。今日、それに到達できた。とても満足している」「市橋を捜すことをやめなかった日本の警察、日本の人々に感謝している。リンゼイは日本を愛していました。ありがとう」とおっしゃったそうです。
本当に救いのない悪質かつ卑劣な事件の中で、このお父さんの冷静で高潔なご対応は、ある意味救いだったと思います。
「死刑が下されないのはおかしい。不当判決だ。」というようなご対応があってもおかしくないと思っていただけに、いい意味で予想外でした。
イギリスは死刑のない国ですが、そういった背景もあるのかもしれないな、とも思いました。
本当に頭が下がります。
もっとも、殺意が認定されたことで、被告人から控訴が提起されるかもしれませんね。
この事件はまだまだ続きそうな印象です。
さて、本日は、もう一つ印象的なニュースがありました。
そのことにもぜひともコメントしたくて、こんな深夜にブログを書いています。
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東電女性社員殺害:遺留物に別人のDNA 再審の可能性




 東京都渋谷区のアパートで97年、東京電力の女性社員(当時39歳)を殺害し現金を奪ったとして、強盗殺人罪に問われ無期懲役が確定したネパール人の元飲食店従業員、ゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)の再審請求審で、東京高検が実施したDNA型鑑定の結果、被害者の女性の体から採取された体液の型が、殺害現場に残された別の男性の体毛の型と一致したことが分かった。マイナリ受刑者を巡っては、最高裁が03年10月、被害者が第三者と現場の部屋に行った可能性を否定した東京高裁判決を支持する決定を出して確定したが、今回の鑑定で再審開始の可能性が出てきた。


 検察側は、別の男性が犯人であることを直接示す鑑定ではないとして、有罪主張を維持するとみられる。捜査段階では女性の体から採取された体液のDNA型鑑定は行われていなかった。


 事件は直接的な証拠はなく、マイナリ受刑者は捜査段階から否認。1審東京地裁は無罪を言い渡したが、2審東京高裁で逆転有罪となった。高裁は、マイナリ受刑者が現場の部屋の鍵を持っていたことや、部屋のトイレに残っていた体液と落ちていた体毛のうち1本のDNA型がマイナリ受刑者と一致したことなどを重視。被害者が第三者と部屋に入った可能性は考えにくいとして無期懲役を言い渡し、最高裁も支持した。


 これに対し、弁護団は05年3月、現場にあったマイナリ受刑者の体液が事件当日より10日以上前のものであることを示す鑑定書が上告審で採用されなかったとして、これを「新証拠」として東京高裁に再審を請求した。高裁は今年1月、被害者に付着した体液などのDNA型鑑定実施を求め、東京高検が専門家に依頼していた。


 再審は、有罪確定者に無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見した場合などに再度、審理を開始する。1975年の最高裁決定(白鳥決定)は明らかな証拠について「新証拠と他の全証拠を総合的に評価し、事実認定に合理的な疑いを生じさせれば足りる」との判断基準を示している。


 DNA型鑑定を新証拠とした再審では、栃木県足利市で保育園女児(当時4歳)が遺体で見つかった足利事件で、無期懲役判決が確定していた菅家利和さん(64)が宇都宮地裁の再審で昨年3月に無罪になっている。【鈴木一生、山本将克】


◇東電女性社員殺害事件


 97年3月19日、東京都渋谷区のアパートの空き室で東京電力の女性社員(当時39歳)が絞殺体で発見された事件。隣のビルに住んでいたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者(44)が強盗殺人容疑で逮捕、起訴された。弁護側は無罪を主張したが、女性の首を絞めて殺害、現金約4万円を奪ったとして無期懲役が確定した。被害者が大手企業の女性総合職の草分けだったことからプライバシーに関する報道が過熱。東京法務局が一部出版社に再発防止を求める勧告を出すなど報道のあり方も問われた。



毎日新聞 2011年7月21日 11時53分(最終更新 7月21日 12時33分)


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ぜひとも書きたいという割には、守秘義務があって実はあまり書けないのですが。
私は、この事件が一審東京地裁で審理されていた平成11年当時、担当部で刑事裁判修習をしておりました。
もちろん、この事件の訴訟記録も見ておりますし、公判にも何度も立ち会っています。
結論として、この事件は、一審では無罪判決が下されました。
我々司法修習生の間では、「やっぱり!」という思いでいっぱいでした。
細かい事情は申し上げられませんが、そういう印象だったのです。
高裁で逆転有罪判決が出たと聞いたときは、一体どんな証拠に基づいての認定だったのだろうと思いました。
司法修習生でもなく、弁護人でもありませんでしたので、証拠や判決を見ることができないのが残念でした。
早いもので、司法修習時代からもう12年が経ちました。
上記ニュースを見て、あのころの思いがよみがえってきました。
ゴビンダ受刑者、今は横浜刑務所にいるのですね。
彼は、一体どんな思いでこの12年間をすごしてきたのかと思います。
果たして再審に至るのか。
注目せずにはいられません。
ではまた。